私に『一期一会』は語れません・・・②

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(前回の続き)

昨日サービスをした方が、この世から居なくなってしまった恐怖。

今までに経験したことのない感情が胸の奥から沸き起こってきます。

頭の中を整理しようとしても、感情が邪魔をして考えがまとまりません。

 

そうこうしているうちに店に到着すると、経営陣が既に集まっていて、

今後の対策への協議を行っていました。

経営陣の自宅は、店に隣接しているので、すぐに集まることができたのです。

 

なぜ、お客様から店に連絡があったのか?

それは、亡くなられたお客様の死因の一つとして、前日の食事があったからなのでした。

しばらくすると保健所の方々がやってきて、経営陣や、シェフとのやり取りを行っています。

 

私は、それを尻目に、『自分に何ができるだろうか?』と必死に考え続けました。

しかし当時の私には経営陣の協議に参画するだけの力がありませんでした。

若さゆえの経験不足。何を言っても受け入れられない立場・・・

私は、何も出来ない無力感に苛まれていました。

・・・

 

数日後、保健所から、

先日のランチは、奥様の死因ではなかったと判明したとの連絡がありました。

その時私には、胸を撫で下ろすといった安堵感よりも、居ても立ってもいられない気持ちが強かったんです。

 

『はやく奥様にお会いしたい!』

 

・・・数日後、私は、先日来店いただいたご夫婦のご自宅を訪れていました。

郊外の、閑静な住宅街の中の一角に、そのご自宅はありました。

ご主人にご挨拶をして、

そして、奥様の遺影の前で手を合わせることが出来ました。

しかしご主人は、私の訪問に戸惑われたようで、会話もほとんど無かったように記憶しています。

そりゃそうです。一度しかお会いしてないんですから・・・

 

その帰り、辺りの風景を見渡すと、一面どんよりとした曇り空・・・

その光景は、このことを思い出す度、今でも脳裏に蘇ってきます。

 

・・・この出来事を境に、私の人生観は変わったか?

・・・残念ながら、日々の生活に埋もれていくうちに、このことは記憶の彼方へと追いやられて行きました。

 

『一期一会』とよく言います。

サービス業に携わる者にとって、この言葉の意味は大きい。

しかし、今の私が、この言葉を胸に刻み込んで仕事をしているかと言ったら、

そうとも言い切れない自分がいる・・・

・・・・客観的に自分の立場を理解しようとしても、環境のせいにしたり、

エゴを優先してしまう自分が未だに存在していることに腹立たしさを感じます。

 

日々仕事をしていく上で、とても大切なこと、

『人として』生きていく上で、絶対に守らなければならないこと・・・

 

これらのことを、胸を張って、空を見上げて、

そして、大きな声で・・・

語れる自分に早くなりたいと、心から思っています。