お疲れ様です。
ラルドワーズの武丸でございます。
以下は実話です。
私に、『一期一会』という言葉の意味を考えさせてくれた出来事。
・・・若かりし頃、私は神戸の高台にある、ロケーションの素晴らしいレストランに勤めておりました。
急な坂道を登りながらの出勤は辛かったのが印象に残っています。
仕事のプレッシャーは大きかったのですが、当時は、それなりに希望を持って働いておりました。
春真っ盛りの、とある日・・・
ランチタイムに年配の物静かなご夫婦が来店されました。
ご主人は割りと恰幅が良く、奥様は小柄で、ご主人の後を寄り添うように静々と進まれる印象。
私はこのご夫婦をお席まで誘導し、お飲物の注文を承りました。
ご注文されたのは、『シャトー・シュノンソー』の白・ハーフボトルで、
ヴィンテージは忘れましたが、この時のエチケット(ワインラベル)は
今でもはっきりと脳裏に焼き付きついています。
お2人は、こういったフランス料理店に慣れていないらしく、とても居心地が悪いご様子。
私は、このお席を担当して、コース料理の進行に合わせながら、さりげなく会話を投げかけてみました。
どうやら今回のご来店の主旨は結婚記念日のお祝いとのこと。
ただ、記念日らしい派手な演出は不要で、2人で静かに、ゆっくりと食事を楽しみたいと仰ります。
淡々と進む食事・・・
お2人は特に会話をするわけでもなく、窓の外に見える神戸の雄大な景色を眺めてらっしゃいました。
・・・桜が満開です。
そう、窓の外には桜並木があり、その背景に神戸の町並みと港が見渡せるロケーションのレストランでした。
ゆったりと流れる時間に、お2人とも満足なご様子です。
お酒も入り、多少は気分が良くなられたのか、ご主人に時折笑顔も見受けるようになりました。
そしてお帰りの際、ご主人は『ゆっくりと桜並木を眺めながら、自宅へ帰ります。』と私に言い残し、
お2人仲良く、帰路につかれたのでした・・・
翌朝、私は出勤時、汗をかきつつ坂道を登りきろうとした時、
サービスの同僚から電話がかかってきました。
こんな時間になぜ同僚から?・・・不安が胸を過ぎります。
『もしもし?・・・何かあったん?』
『昨日の昼に来店された〇〇様ご夫妻の奥様が、昨夜亡くなられたそうです!』
『えっ!?』
私は頭の中が真っ白になりました・・・
(すみません、続きは次回に。)